今回はちょっとマニアックな、『マイクプリ』についてお話します。
【マイクプリ(マイクプリアンプ)とは】
簡単に言ってしまうと『マイクのレベル』を『ラインのレベル』にまで増幅する機械です。
マイクというのは実は微弱な電気信号で、そのまま入力してもギターやベース、シンセサイザーの出力に音量が負けてしまいます。
その電気信号をギターやベース等と同じくらいのレベルにまで持ってこれる機材がマイクプリアンプになります。
一番分かりやすいのはオーディオインターフェースの入力部分ですね。これが『マイクプリ』になります。
ざっくりとした歴史
元々の歴史はミキシングコンソールというレコーディング用のミキサーから始まり、時代を経てマイクプリ単体として独立した機材が誕生していったそうです。
代表的なものとして、NEVE、API、SSL等が挙げられますね。今でも熱狂的ファンが多く、現在でもスタジオで使用され続けています。
特にNEVEヴィンテージは非常に評価が高く、それらの機材のレプリカモデルが現在多くのメーカーより販売されています。
2000年代
私が音楽を始めた2000年代では、PCの技術の進化によりプラグインとしてこれらの音を再現したものが出始めていました。(代表的なメーカー:WAVES)
という考えを持った人は多かったのではないでしょうか?特に機材に余りお金を掛けられない学生達はきっとそう思ったはずです。(現に私も思っていました)
2010年代
2014年でしたか。ここに来て新たな機材が登場しました。それがUniversal Audioから登場したオーディオインターフェース【ApolloTwin】です。
Macでしか使えないという欠点がありながらも、このApolloTwinは世界中で大ヒット。
ついに自宅環境でも、プロ顔負けの音が録れる時代が来てしまいました。
Apollotwinが音楽業界に投げかけたもの
まずApollotwinは『デジタルとアナログが混合した』オーディオインターフェースだということです。
DSP(PCとは別で演算処理する)を搭載し、UADという独自の物理モデリングされたプラグインを動かせる機能を持っています。
Unison(ユニゾン)とは
簡単に言うと、マイクプリアンプのシミュレートができるようになりました。
一つ何十万もするような機材の音が、何個もApollotwinで使えるようになってしまった訳です。Apolloのアナログ回路は、UADプラグインを掛けた瞬間にオリジナルと同じ回路の動作をすることができます。
この機材が更にデジタル、アナログの機材論争に拍車を掛けることになりました。(少なくとも私はそう思っている)
【Apollotwinが出る一方で】
ハードウェアのプリアンプは今なお、いろいろなメーカーから販売されています。
プロオーディオ用のラックタイプもあれば、API500モジュールなんていうのもあります。
1Uラックタイプ:VintechAudio/X73
API500モジュール
更には10万円を切る価格帯で非常にクオリティの高いマイクプリも出てきました。
【ハード、ソフト論争】
ではなぜ未だにハードウェアの需要があるのでしょうか。
と思っていた当時の自分を殴ってやりたい。。
マイクプリに対する誤解
そもそもマイクプリという物は『マイクレベルの信号をラインレベルに増幅する』だけの機械です。
そのレベルを増幅する過程の副産物として『サウンドの変化』があります。
なので、何も分からずサウンドを変化させる、もしくは音質が上がるからという理由でマイクプリを買うのはオススメしません。
【オーディオインターフェースのマイクプリとハードウェアのマイクプリの違い】
これは私の考えですが・・
ハードウェアのマイクプリには、インプットゲインとアウトプットゲインが付いているものがほとんどで、このゲインの調整によりちょっと歪んだ音を作ったり、クリーンなサウンドを作ったりできます。
UADのプラグインでもインプット、アウトプットのノブはありますが、正常に動作する部分までしか録ることができないようになっています。
そして第二に、オーディオインターフェースよりしっかりとマイクの電気を増幅させられることにあると考えています。
特にオススメなのが、『ダイナミックマイク』の増幅です。よくダイナミックマイクで録ってるというアーティストを雑誌等で見たことがありませんか?(シュアーSM57、SM7B等)
あの方達はなにもそのままダイナミックマイクをインターフェースに差している訳ではないはずです。きっと裏ではハードウェアのマイクプリを通しています。
ダイナミックマイクは入力時の感度が低いため、ゲインレベルが低いオーディオインターフェース等では適切な音量になる時にはノイズもあがってしまいます。
ですがダイナミックマイクにマイクプリをつけて増幅した音を送ってあげることにより、通常よりもノイズが低いクリアな音が取れるようになります。
もしコンデンサーマイクに対して『扱いがめんどくさい』、『繊細と聞いたから不安がある』と考えているなら、ダイナミックマイクとマイクプリを使って録音するという方法もありだと思います。
昨今の住宅事情を考えるなら、実はダイナミックマイクの方が無駄な環境音を拾わずに綺麗に音を録る事ができる場合があります。
実は昨今の配信事情にもマイクプリは重宝します。
コロナ禍で急激に高まった配信需要。17Liveやツイキャス、Youtubeライブ等様々な配信媒体が存在する中、オーディオインターフェースが急激に売り上げを伸ばしています。
特に人気なのがYAMAHA AG03。
このオーディオインターフェースはミキサー型でPCの音をマイクや楽器と混ぜられるループバック機能を搭載、更にその音を手前のツマミで調整が可能です。
ヘッドセットマイクも使え、更にはエコーも掛けられる。正直配信用の機材としては破格の機能を盛り込んでいます。発売から5〜6年ほど経っていますが今だに圧倒的使いやすさで人気の機種です。
ただしデメリットもあります。それは「プリアンプ」のグレードです。
やっぱり1万円台のオーディオインターフェースということもあり、高性能なマイクを購入したとしてもそのクオリティを存分に発揮する事は非常に難しいのです。
なまじ使い勝手が良すぎるためこの機材から乗り換えることもできないため、更なる音質アップを求める場合は大きな障害となります。
結論:ハードウェアのマイクプリアンプを使う
オーディオインターフェース自体が変えられないのであれば入力部分のクオリティだけ上げてしまえばいいのです。
これならマイクとAG03の間に接続して音量をあげるだけで手軽に音質アップをする事が可能です。単なるレベルをあげる機械のため、今までの環境を崩す事もありません。
PCの知識がない方でも使いやすいため、もし音質を上げたい!と考えている方は一度こちらを検討してみるのもいいかと思います。
この記事を見て、もしマイクプリについて相談をしたい方はお問い合わせフォームにてご連絡ください。